BECK

STAFF/CAST
監督/堤幸彦 出演/水嶋ヒロ 佐藤健 桐谷健太 忽那汐里 中村蒼 向井理 水上剣星 古川雄大 桜田通 竹中直人 松下由樹 配給/松竹
STORY
 平凡な高校生コユキの前に、音楽には妥協を許さないニューヨーク帰りの天才ギタリスト、南竜介が現われる。彼の飼い犬“BECK”を助けたことが縁で知り合い、古いギターを譲り受けたコユキは音楽にのめり込んでいく。そんな中、新バンドのメンバー探しをしていた竜介は、ボーカルの千葉とベースの平をスカウト、飼い犬にちなんで命名したバンド“BECK”を結成する。
■2010年9月4日(土)より全国ロードショー

 バンドを題材にしたコミックを映像化する際、もっとも難儀するのは作品の肝要(キモ)となる音楽をどう具現化するか、だろう。そう考えると脚色やキャスティングよりも重要なファクターだが、さすがは自らもギター少年だった堤幸彦監督である。原作のハロルド作石氏が二次元上で重厚に描いてみせたアンサンブルを、聴く者の魂を震わせるブ厚いバンドサウンドへと昇華してみせた。また「20世紀少年」シリーズ('08~'09)同様、原作キャラの忠実なビジュアル化は本作でも健在。方向性を誤ればコスプレ大会になる危険性をはらむ手法も、バンド(=BECK)にまつわる人間模様をしっかりと描き込むことで、王道の青春ストーリーに仕立てている。異論もあるかと思うが、平凡な高校生がギターを手にすることで自分の世界を広げていくという共通項から、新世紀版「青春デンデケデケデケ」('92)と捉えると興味深いかも。それはともかく、終盤のライブシーンは圧巻。ぜひとも劇場の大音量で体感してほしい。(平田真人)


オカンの嫁入り

STAFF/CAST
監督/呉美保 出演/宮崎あおい 大竹しのぶ 桐谷健太 絵沢萠子 國村隼 林泰文 斎藤洋介 春やすこ たくませいこ 配給/角川映画
STORY
 父の顔を知らずに生まれた月子は、母の陽子と2人で支え合って生きてきた。酔っぱらって若い金髪の男・研二を連れて帰宅した陽子は、翌朝、月子に“この人と結婚します”と言い放つ。あまりの唐突な母の行動に月子の不満は爆発、勢い余って家を飛び出してしまう。家族同然の付き合いをしている大家のサクや陽子の上司・村上は、月子をなだめようとするが…。
■2010年9月4日(土)より全国ロードショー

 脚本も兼ねていた前作「酒井家のしあわせ」でもそうであったように、監督・呉美保の、家族の在り方を見つめる眼差しはとても温かく、そして優しい。ときに最も面倒くさくてややこしくて、近いからこそ許せなかったり意地を張ったり。でもやっぱり最も大切で愛おしい――そんな家族像を本作でも感じさせてくれる。一見、ハチャメチャに見える母親に隠された秘密が明かされるとき、当たり前だと思いがちな日常がずっと続くわけではないのだと悟らされるのだけど、何気ない日々の描写が彼女は実にうまいので、余計、胸に響く。ご近所とのお付き合い。思ったことを素直に言い合ってぶつかり合うこと。朝の挨拶を交わすこと。そして誰かと食卓を囲むこと。特に食事シーンの多さはこだわりらしく様々な形で登場するのだが、言葉を交わすよりもむしろ雄弁にすら思えて印象的。寡作らしいけれど、彼女の3作目が早くも楽しみだ。大竹しのぶ、宮崎あおい、桐谷健太といった芸達者たちもみな素晴らしい。(熊谷真由子)


トイレット

STAFF/CAST
監督/荻上直子 出演/アレックス・ハウス タチアナ・マズラニー デヴィッド・レンドル サチ・パーカー もたいまさこ 配給/ショウゲート
STORY
 引きこもりでピアニストの兄モーリー、厭世的でプラモデルオタクの弟レイ、勝ち気な大学生の妹リサの3兄妹。自由奔放に生きてきた彼らも、母を亡くしたことを機に彼女の遺した実家で同居することに。さらにそこには、猫のセンセー、そして母が亡くなる直前に日本から呼び寄せた3兄妹の祖母“ばーちゃん”もいた。そして、ばーちゃんと3兄妹の交流が始まり…。
■2010年8月28日(土)より全国ロードショー

 「かもめ食堂」で一躍“人気監督”という冠を得た荻上直子だが、次の「めがね」もヒットはしたものの、正直“同じことをやってどうする?”と危機感を覚えた観客も少なからずいたはずだ。それだけに不安含みの期待が募った本作。結果は、荻上監督してやったり、の気持ちのよい佳作に仕上がった。前2作は、偶然出会った人々の心の交流を描いたが、今回は嫌でも切れぬ関係、“家族”の物語。関係は対照的だが、そこに監督ならではの“微妙な距離感”がいい具合に流れ、心をくすぐる。北米を舞台にしながら、まったく英語が喋れぬ日本人の“ばーちゃん”を中心にして、3人の日本語を解さぬ子供たちが、家族っていいなと想い直し、あるいはトラウマから脱して再生し、絆を育んでいく過程が何ともユニーク。どこかファンタジー味を帯びてもいるが、互いを思い合う気持ちはリアルに伝わってくる。ユーモラスでシニカルで、とっても優しい。人間同士の心の結びつきを信じたくなる後味なのだ。(折田千鶴子)


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